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リーズロットさんが素直に責任者の方へと向かってくれた事を確認し、俺ことログも行動を開始する。
あっちは彼女に任せた方が、きっと上手くいく。
そう確信出来るだけの何かがあった。
「じゃあ、手当てを済ませるぞ」
そう言って俺が男達の方に振り返ると───、微妙な視線が絡み付いてきた。
「彼女に手当てをして貰うつもりだったのか? 残念だったな」
なら、それさえ利用させて貰うさ。
俺が悪役に徹する事で、より強くリーズロットさんへの信頼を向けさせる。
今から行う手当ての分は、この言葉で帳消しになるだろう。
ブーイングの嵐が吹き荒れている事だし。
さて。
露骨に嫌そうな顔をされながらもキッチリ治療を終えた俺は、リーズロットさんの様子を窺うべく視線を横にスライド。
………。
あの子、背中から後光でも差してるのかな?
俺に対しては全く素直じゃなかった性悪責任者が、恐ろしく従順になって色々喋ってるみたいなんだけど。
これが人徳の差か、と酷く納得する。
本当に酷く納得する。
と言うか酷い話だ。
俺も真面目にやってたんだけどなー。
適材適所って言葉、今は諦める為に使っておこうか。
そんなネガティブ思考を振り払い、未だにぶつくさ文句を垂れる野郎共を放置して。
俺は視線の先に居る二人の方へと歩く。
多種多様な、けれど地味な色ばかりの服が乱雑に放置されている中、申し訳程度に片付けられたテーブルが一つ。
そこにある席に着き、向かい合って話をしているのは二人の男女。
片や、容姿端麗な金髪碧眼の少女。
片や、草臥(くたび)れた中年オヤジ。
アンバランスな構図だよなー。
「そちらは終わったのですか?」
気配を消して……、とまでは言わないけど、かなり静かに後ろから近付いてきた俺へ。
リーズロットさんは至極自然に声を掛けた。
この感覚の鋭さは、天性のモノなのかな。
羨ましい限りだ。
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