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「気乗りしない事とは言え、自ら買って出た仕事を投げ出したりはしないよ。……気乗りしない事とは言え、さ」
後ろで聞き耳を立てている連中にも聞こえる様に。
やるからにはしっかり、悪役を。
本音が漏れているだけだなんて、そんなまさか。
「不満の言葉は減点モノですが、感謝はしています。ありがとうございました」
目を少しだけ細め、柔らかく微笑む「女神様」。
……なんて、皮肉の言葉にしたつもりが、ただの誉め言葉を言った気分だ。
戦っている最中とは別人の様な、柔らかな物腰。
教会の修道女です、と仮に言われたとしても。
戦いをする人間には見えない整った容姿も相まって、何も知らなければ疑えそうに無い。
「一応、どういたしましてと言っておくよ」
それで本題に入りたいんだけど、と俺は話を変える。
「何の実験を行っている?」
会話の対象も責任者へと変え、鋭い視線を容赦無く突き刺す。
「ここは……生体機器(デバイス)の、試験場だそうです」
責任者の代わりに答えたリーズロットさん。
控え目で、暗い声色。
「被験者は、ここに連れてこられた魔法使いの犯罪者。内容は、例えば───」
「もう良い!」
止めたのは俺では無く、責任者。
「もう、良い……。俺が……、全て見せよう」
生気の抜けた亡者の如く蒼白な顔を、何とか上げて。
よろよろと、責任者は立ち上がった。
その視線は虚ろにさ迷いながらも、辛うじて俺へと向けられている。
まあ、俺の推測通りなのかな。
ある意味では、期待通りとも言える。
……胸糞悪くなる話だけどな。
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