捕虜

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「ああ、いや、その青年は……魔法使いですか。見たところ、相当な上物。成る程、これは期待出来そうだ」  俺を見た途端、初老の男の声色が変わった。  料理人が一流の食材を見たかの如く、活き活きとしていた。  表情は平淡だが。  ───解析。  この男、目が生体機器(デバイス)になっているらしい。  俺が飛鳥に教えた解析魔法……の、劣化版だな。  俺の性能を、あまり正確には解析出来ていない。  でなければ、こんな悠長に構えていられる訳も無い。 「ですが、この女は何ですか。魔法使いですら無いなら、何の価値も無い。早く処分を」  初老の男は、リーズロットさんを見てそう吐き捨てた。  いやいや。  幾ら自分が枯れてるからって、こんな美少女にそこまで言えるかな普通。  ……なんて、コイツに言ったら面白いかな?  あー……、笑える気分じゃないから、色々ダメだ。  やっぱり今の無しで。  無理に笑おうとしても無駄だね。 「兵士が戦場で死ぬのは、各々覚悟している事だ」  俺は一歩、前に出る。 「何せ、人を殺しに行くんだからな。その逆も、当然有り得る話」  また一歩、前に。  初老の男が目の前に。 「そしてその場合の死なら、人としての尊厳は守られる。推奨される事は無くとも、決して恥じ入る死に様では無い」  だが、と繋ぐ。 「これは、何だ?」  呪詛を吐く様に。  汚物を見る様に。  俺は嫌悪感を隠しもせず、感情をぶち撒ける。 「『尊厳』……? 『何だ』、とは……? 仰る意味を計り兼ねますが」  ここまで饒舌に語って見せても、初老の男が見せた反応は困惑。 「科学の進歩に犠牲は付き物。その犠牲となる事は、むしろ誇るべきモノではありませんか」  ああ、そうか。  この男の解釈では、そうなるのか。 「……ログ」  ここで突然、今の今まで無言だったリーズロットさんが俺の名を呼んだ。  俺は視線を左へ90度回転。 「どうやら貴方は私と同意見の様です。この場は全力で、貴方に協力しますよ」  わーおぅ。  最強の前衛が味方に付いた。  心の底から頼もしいね。  さて、どうしてくれようか?
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