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「ありがとう。その言葉で、唯一の不安要素が消えた」
リーズロットさんの言葉は信用に値する。
清廉潔白な人物である事は、事前情報でも自分の目でも確認した。
それに、「あの宗助が」信頼を寄せている。
だから、こちらが余計な真似さえしなければ、今回は完全な味方だろう。
そもそも、俺から裏切るメリットは何一つとして無い。
「タスクさん、貴方は下がっていてください」
リーズロットさんが、責任者を見て指示。
そう言えば、タスクって名前なのか。
別段、興味も無いけど。
「あ、あぁ……」
何とも情けない声で、けれど指示通りに下がる責任者。
その間に、リーズロットさんは剣を構えた。
刀身が青く光り、表面に炎を実現させているのが分かる。
「魔法使いでも無い者が、機器(デバイス)を……? これは興味深い。じっくり調べてみよう」
にわかに張り詰めた空気を完全に無視し、初老の男はそう発言。
緊張と言うモノが感じられない。
「リーズロットさん、先に言っておく。俺の目的は、ここにある研究で得られた成果。アインでは行わなかった実験が多数行われた様だしね。情報に関しては価値が高い」
だったら俺も、ひたすら自分の事だけを考えようじゃないか。
「まあ、そんな訳だ。全ての研究成果を即座に開示しろ。そうすれば、命だけは取らずに済ませ───」
俺が言葉を言い終える直前、灰色の何かが俺に襲い掛かった。
攻撃を受ける直前に実現させた刀が受け止めているソレは、ビッシリと鱗状の何かに覆われた手。
鋭い五本の爪が、照明の光を鈍く反射している。
「……人の話は最後まで聞く様にと、誰からも教わらなかったか?」
そんな素敵な人外ハンドをお持ちの、白衣を着た研究員らしき男に問い掛けた。
……右手だけがそうなっている。
他はひ弱そうに見えるんだけどな。
でも、コイツはさっきまで、俺から十メートル以上は離れた場所に立っていた。
生身の人間の瞬発力じゃ無い。
「薄汚い賊の話を聞くつもりは、無い」
俺の刀を受け止めていた右手を、研究員はガクッと下に落としてきた。
「大人しく実験材料になれ」
力業のガード崩しに、いつの間にか灰色の鱗に覆われていた左手の攻撃。
速度はあるが至って単調。
───雑魚は雑魚らしく、地に這いつくばれ。
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