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「まあ、宗助の魔法は特別だからなぁ」
私は道すがら、アキヒサ殿に事の次第を説明した。
そして返ってきたのが、先程の言葉。
「『特別』、ですか?」
この言い方は、多少なりともソ───ユウキ殿の魔法の本質を理解している事を表している。
「俺も最初は半信半疑だったんだがな。でも、あれだけ見せ付けられりゃあ、信じるしか無ぇだろ」
「それは、何を……?」
ソウスケがどう特別なのか、分かるのだろうか?
……もう良いか。
頭の中では「ソウスケ」で。
「そりゃあ、本人に訊いてくれ。俺が言って良いのはここまでだ」
「な───、何ですか、それはっ!?」
ここまで思わせ振りな事を言っておきながら!
「そんなに宗助の事が気になるのか?」
「貴方が思わせ振りな言い方をするからでしょう!」
「ハハッ、違い無い」
全く悪びれた様子も無く、アキヒサ殿は笑う。
「で、あんたは宗助をどうするつもりなんだ?」
「……どうもこうも、私は上の指示に従うまでです」
分かっている。
この返答が「逃げ」である事くらい。
「そうか」
にも関わらず、アキヒサ殿は詮索して来ない。
いっそ詮索された方が、ずっと気が楽だと言うのに。
「ただいま」
ソウスケ達が住む家に、戻って来られた。
「只今、戻りました」
私は声のトーンを落として言った。
「おかえりなさい」
玄関先で出迎えてくれたのはサクラ殿。
「リーズロットさんも一緒だったんですね」
「はい。偶然外でお会いして、そのまま」
道に迷ったなどとは、口が裂けても言いたく無い。
「迷ってた所を俺が拾ってきた」
言われたくも無かった。
一日の中で、日が最も高く昇った頃。
「これは……美味しそうですね」
イチムラ家の食卓に、五つの大きな皿が並んだ。
薄い黄色の細長いモノにソースが掛けられており、タマネギやベーコンが入っている。
所々に見える黒い粒々は何だろうか?
「何と言う料理ですか?」
恐らくこの料理を作ったであろうサクラ殿に、私は質問した。
「カルボナーラって言うみたいです」
しかし返って来たのは、そんな言葉。
「これは、サクラ殿が作ったのでは無いのですか?」
もし違うのなら、誰なのだろうか。
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