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「宗助が作ったんですよ」
「ソウスケが?───あ、いや、ユウキ殿がですか」
幸い、この場に居るのは私とサクラ殿だけだった。
ソウスケは居ない。
「……はい。一部の材料は、かなり手の込んだ事もしてました」
しかし、気にされてしまったらしい。
返答が遅かった。
「この細長いモノは何かの粉を卵とか塩とかと混ぜて作ってましたし、ソースの材料の一つは昨日から、牛乳を使って作ってましたね」
……ええと。
「彼は料理人なのですか?」
「私がそう訊いたら、『そんな大層なモノじゃ無い』って言われました」
益々、彼が分からない……っ!
「実際、そんな大層なモノじゃ無いからな」
私が頭を抱えていると、背後から声が聞こえてきた。
「ユウキ殿……」
振り返ると、そこに居たのは紛れも無くソウスケ。
……良かった。
詰まらず「ユウキ殿」と言えて。
「呼び名は戻されたか」
ソウスケは至って淡白に言った。
「……ええ、まあ」
うぅ……、不機嫌そうな声で言ってしまった。
そんなつもりは無かったと言うのに。
「まあ、仕方無いな」
何故だろうか。
彼の冷めた声が、妙に心に突き刺さる。
「……少し冷めてるな」
───ッ!
「自覚有りでやっているのですかっ!?」
私は思わず、そう言った。
「は……?」
それに対しての反応は、「何を言っているんだ?」と言う表情。
私は、ソウスケの右手が皿の上に翳されているのを確認した。
「……料理の事、だった様ですね」
「ああ、そうだけど。リズは何の事だと思って───」
「気にしないでください」
……自己嫌悪。
また刺々しくなってしまった。
「何かあったんですか?」
当然の様に、サクラ殿が質問。
当然の様に、私は困る。
「別に、大した事じゃ無い」
しかし、ソウスケがすぐにそう答えた。
「……まあ、良いけど」
納得した様子では無いものの、サクラ殿がこれ以上の追及をしてきそうには無かった。
助かった……。
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