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「で、蒸し返すみたいで悪いんですけど───」
私は再度、剣を突き付ける。
「将来の夢は剣の錆になる事ですか。ならば私が叶えて差し上げましょう」
「───って、違いますよ! ホントは何で落ち込んでたのか訊こうとしただけですって!」
「……そうですか」
私は静かに剣を引く。
「別に、大した事ではありません。ただ、ユウキ殿に命を救われた恩をどうすれば返せるのか……分からなかっただけです」
「すげー重いんですけど。十分大した事なんですけど」
そう言う割には、随分とアッサリしている。
「他人事の様に言っていますが、貴方も私と同じでしょう。私程、直接的ではありませんでしたが」
マクダネル少尉は、きちんと理解しているのだろうか?
軍人が民間人に命を救われたと言う事実を。
「……黙っとくって言ったしなぁ」
「はい?」
「いや、何でも無いです。独り言なんで気にしないでください」
何故か遠い目をしながら、マクダネル少尉はこれ以上の詮索を拒否した。
「まあ、俺だって分かってますよ。守る側と守られる側が逆転しちゃってた事くらいは」
そして返って来たのは、的を射た内容。
「ならば───」
「でも、ですよ」
私が言葉を発する前に、マクダネル少尉は続けようとする。
「───。何ですか?」
私はひとまず、聞き手に回る事にした。
「宗助さんを、俺達が考える『民間人』のくくりに入れてしまって本当に良いのか、って事です」
………。
「強力な魔法に対して、比較的免疫がある俺達から見ても、宗助さんの魔法は規格外でしたからね。出会って最初の時なんか、狙いが明らかだったとは言え、咄嗟の攻撃であの威力と精度ですよ? 軍の魔法使い連中も真っ青でしょう」
「それは……」
言い掛け、言葉に詰まる。
「準備を行ったその上で、ただ広範囲に適当に攻撃するのとは、訳が違いますからね」
………。
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