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「そして道中。最初は出てきた獣に対して、物凄く早く対応してるのかと思って見てましたよ。でもアレ、ちゃんと見てたら違ったみたいなんですよね」
「違った」?
「完璧に、襲われる方向と時間が分かってて動いてました」
「そんな馬鹿な……。幾ら何でも、そんな未来を見通す様な事は不可能でしょう」
マクダネル少尉に嘘を吐いている様子は無いものの、流石にそれは鵜呑みに出来ない。
「見てたんですよ、何度も。次に獣が出てくる方向を。それも毎回」
繰り返すが、マクダネル少尉に嘘を吐いている様子は無い。
「……それは、間違い無いのですか?」
「偵察任務における上からの俺の評価、知ってますよね?」
……「最高峰の偵察兵」。
「その沈黙は肯定と受け取るとして。その俺が、隠れる必要すら無く、ただ観察してたんです。勘違いすると思いますか?」
「いえ……。ですが、魔法を使っているにしても不可思議です」
完全に、理解の範疇を越えている。
「ま、ソコは本題じゃ無いんですけどね」
「そうですね……。はい?」
思わず同意してしまったが、マクダネル少尉は先程何と?
「だから、ソコは本題じゃ無いんですって。元々は命の恩人云々の話だったじゃないですか」
「そ、それはそうですがっ!」
「とにかく俺が言いたいのは、そんな出鱈目な人に助けられたって別に不思議じゃ無い、って事ですよ」
「………」
反論の仕方が、分からない。
「で、俺達の仕事は恩返しの方法を考える事じゃ無い。件(くだん)の魔法使いを発見し、目の当たりにしたその力を、上に報告する事です」
マクダネル少尉の眼が、今まで見た事が無い程に鋭くなった。
その眼に映る今の私が、何と小さい事か。
「そう、ですね……。確かにそれが、私達の仕事です」
私は、何を見失っていたのか。
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