青い炎の魔法使い

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「まあでも、そんな事考えなくても、宗助さんに頼んでたと思いますよ」  苦笑が似合う人だなぁと思いつつ、俺は言葉を続ける。 「何だかんだで良い人みたいですから」  そう言うと、また溜め息を吐かれた。 「自分で言う事じゃ無いが、俺は相当怪しい人間だと思うんだけどな」 「軍から捜索されるくらいですしね」  悪い事もして無いのに。 「それが分かっていながら、護衛を頼んだり、良い人だと言ったり……。その辺り、どうなんだ?」  呆れた様に言われてしまった。 「大丈夫でしょう。特に心配はしてませんよ。と言う訳で護衛の件、頼みました」 「……分かった。自分でも適任だと思うしな」  宗助さんは諦めた様に言った。  何だかんだで良い人だよなぁ。  翌朝。  少し風が強く、若干の肌寒さを感じる。 「大変お世話になりました。後日、また伺わせて頂きます。その時は何か、お礼になる物を持って来ますので」 「お礼なんて良いですよ。またいつでも遊びに来てください」  玄関先で、キャヴェンディッシュ中尉が桜さんと会話をしている。 「宗助。仕事はキッチリこなせよ」 「ええ、言われなくとも」  宗助さんは昭久さんに激励的な何かをされていた。 「では、そろそろ行きます。本当に、ありがとうございました」 「ありがとうございましたー」  俺もキャヴェンディッシュ中尉に習って礼を言い、漸(ようや)く村を出発。  森に入り、獣からの襲撃は計五回。  どれも、宗助さんは獣が来る直前に準備。  余裕を持って撃退。  内一回は、三方向から同時に獣が来たものの、「三匹同時に」やはり撃退。  正面から来た一匹は翳した手から炎を浴びせ、斜め後ろの左右から来た二匹は突然倒れた。  恐らく、オーリスで悪党一味を眠らせた魔法だったんだろう。 「ユウキ殿」  このまま森を抜けるかと言った所で、キャヴェンディッシュ中尉が先頭を歩く宗助さんの名を呼んだ。 「私としては、このまま森を抜けた後も私達に同行して頂きたい。宜しいですか?」  ……マジですか。  攻めますね、キャヴェンディッシュ中尉。
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