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タタタッと小走りし、キャヴェンディッシュ中尉は宗助さんの隣に並んだ。
「オーリスに用事があったんだけどな……」
宗助さんは困った様に答える。
「昨日だってそのつもりで、森に居たんだ」
多分、嘘じゃ無いな。
「では、それに同行します」
わーお。
キャヴェンディッシュ中尉ってば強引だねぇ。
「それだけは絶対に御免被(こうむ)る」
「何故ですか?」
「理由も何も話せない」
珍しい気がする。
宗助さんがここまで頑なに断るなんて。
いや、出会って間も無い訳だけど。
「ではその用事が終わるまで、私達は宿屋で待機します! それならどうですか!?」
必死に食い下がるなぁ。
「まあ、それなら。桜と昭久さんにも、『ひょっとすると』とは言っていたしな」
大丈夫なのかよ。
「え……、あ、では、お願いします……」
大丈夫だと思っていなかったらしく、キャヴェンディッシュ中尉は尻すぼみになりながら言った。
オーリスに着いた俺達三人は、一度全員で宿屋に向かった。
宗助さんの用事がいつ終わるか知らないけど、宿屋の場所は知っておいて貰わないと、どうしようも無いし。
宿屋に着くと、宗助さんはサッサと何処かへ行ってしまった。
「尾行するって手もありますけど、まずバレるんですよね。森の中の獣が何処から襲い掛かって来るのかすら、分かっちゃうくらいですし」
俺が居るのは、宿屋の部屋の中。
勿論今のは独り言なんかじゃ無く、キャヴェンディッシュ中尉がしっかりと聞いていた。
「個人的にも、そんな気分じゃ無いですしね」
ベッドの縁に腰掛けて、本音を暴露。
「来てくれると、思いますか?」
そんなのはお構い無しに、キャヴェンディッシュ中尉は自分の質問を優先させた。
「宗助さんが用事を済ませた後にここへ、って事ですか?」
まあ良いか。
「ええ。私はそう信じたいのですが、どうも冷静に判断出来ているのか自信が無くて……」
「来てくれると思いますよ、俺も」
俺は軽く答える。
「ここで約束を反故にする事が、どれだけ自分の首を絞める事になるのか。分からない馬鹿だと思いますか?」
俺は思わない。
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