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「魔法で何とかしようか?」
「いえっ、大丈夫ですっ」
ソウスケからのありがたい申し出を私───リーズロット=キャヴェンディッシュは断り、マクダネル少尉に続いて街の外へと向かう。
街の外で馬に乗り、真後ろに乗ったソウスケに言う。
「もっとしっかり捕まってください。これでは振り落とされますよ」
私に遠慮してか、ソウスケの腕は緩く私の腰に回されていた。
「……分かった」
その言葉と共に、ソウスケの身体が私に密着する。
「───ッ!」
うぅ……、男性とここまで近い位置になるのは初めてだ。
「だ、大丈夫ですっ!」
「まだ何も言って無かったんだけどな」
そんな事は分かっている!
「二人とも。成立したてのカップルみたいな事やってないで、行きますよ」
「貴方は黙っていてください!」
茶化してくるマクダネル少尉を睨み付ける。
しかし、自覚出来る程に顔が熱くなっている為、大した意味は無いだろう。
「ではソウ───ユウキ殿、行きますよっ」
気恥ずかしさを圧し殺し、馬を走らせる。
どのくらいの時間が経過しただろうか。
時間感覚が完全に狂っていた所為で、私には良く分からない。
ただ一つ言えるのは、私はこの状況に慣れてきたと言う事だ。
「大丈夫ですか、ユウキ殿? 慣れていないと、馬に乗っているだけで辛いものですから」
そう、このくらいの気遣いが出来る程には。
「今の所はそんなに。心配してくれてありがとう」
「いえ……、元々こちらの都合に付き合って頂いている訳ですから。礼を言うべきなのは私の方です」
良かった。
今のはそんなに悪く無い返し方だったと思う。
「……そろそろ、城が見えて来そうですね。申し訳ありませんがあと少し、このまま辛抱してください」
城下町が僅かに見えてきた。
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