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我が国サザランドの首都ベクタは、平地に存在する。
そこには幾つもの道が格子状に走り、それによって出来た沢山の四角い領域内には、それぞれ大小様々な建造物が建てられている。
また、ベクタを中心から二分する一本の道はそのまま中央にある城へと繋がり、他の道の三倍程の幅がある。
防衛の観点からすれば、愚かしい事この上無い造りだ。
しかし、これはつまり「それで問題が無い」と言う事。
「平城京……」
低い土地にあるそのベクタが、見渡せる距離にまで近付いた頃。
私のすぐ後ろから、そんな呟きが聞こえた。
「はい?」
耳慣れない言葉だったので、私は聞き返した。
「いや……、あの街の名前は?」
「ああ、ええと、ベクタですが。……この国の首都ですよ?」
答えてから気付いた。
ソウスケは何を言っているのだろうか?
「ずっと前からあんな形なのか?」
返ってきたのは、更なる質問。
「……十三年程前から現在の形に近付いて行き、その三年後にはほぼ現在の状態になったと聞いています。私自身はあまり覚えていませんが」
博識なソウスケが、こんな質問を……?
「また、私をからかっているんですか?」
努めて冷静な声を出したつもりだったが、棘のある言葉になってしまった。
「………」
それに対するソウスケからの返事は無い。
「ユウキ殿……?」
不審に思い、私は名を呼んだ。
「口は、固いか?」
「はい? あ、はい。守秘義務は遵守します」
一体、何を言われるのだろうか?
「………」
そう思ってソウスケの言葉を待つが、中々それは来ない。
余程、話し辛い事なのか。
そのまま、ベクタに入ってしまうかという所まで来た時。
「俺は、こことは違う世界から来た」
ソウスケは確かに、そう言った。
「……………はい?」
理解が追い付かない。
「こことは違う世界」?
ソウスケは何を言っている?
「信じられないなら、冗談だったと受け取ってくれ。無理に信じて貰おうとは思わない」
冗談だった、と言う印象は受けなかった。
だが私は一度、ソウスケに手酷くからかわれている。
だからこれは、本当に冗談だったのだろうか?
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