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「今度は何をしたんですか、宗助さん?」
完全にキレていたキャヴェンディッシュ中尉の背中を見送り、俺───カラム=マクダネルは視線を宗助さんに向ける。
「カラムにも同じ事を言ってみようか?」
やや疲れた顔が、そこにはあった。
「あー……、それはどういう意図で?」
諸々の判断材料がちょっと足りない。
「嘘の様な本当の話をしよう、と言う意図だな」
「成る程。キャヴェンディッシュ中尉に信じて貰えなかったから、からかっただけだと言って誤魔化した訳ですか」
当たりを付けてそう言うと、宗助さんは無言で頷いた。
「自分の評価をガシガシ下げていきますね」
「さっきのは本当に不本意だったんだけどな。まあ、仕方無いさ」
諦めの良い人だなぁ。
だからって、その場で停滞してる訳でも無いみたいだけど。
「じゃあとりあえず、俺にも聞かせて貰えますか? 城に着いたら、また別の人に話して貰う事になると思いますが」
「残念だけどな、カラム。それは無い」
「無い」?
「何も話さないつもりですか?」
「行きながら話そう。これ以上遅れると、更に機嫌を損ねそうだ」
それもそうか。
「……流石に、俺も信じられませんね。ここ以外の世界から来たなんて」
馬鹿みたいに広い道をのんびり歩きながら、宗助さんに話を聞いた。
確かにこれは、キャヴェンディッシュ中尉も信じられないだろうな。
「その世界に俺を連れてってくれるなら、信じますけど」
「まず俺が帰りたい。その方法が分かるなら」
わーお、切実。
事実なら。
「じゃあ、どうやってこっちの世界に来たんですか?」
まずは話を合わせておこう。
じゃないと進まない。
「突然光に包まれて、気付いたら草原のど真ん中。アテも無く、半ば途方に暮れながらさ迷っていると、村を発見。これで助かると思いきや、村人達と何か話が噛み合わない。決定的だったのが、魔法の存在。俺の世界にそんなモノは無かった。そして今に至る、と」
あー……、うん?
「魔法の存在」が「無かった」?
「宗助さん、滅茶苦茶上手く魔法使ってるじゃないですか。一体いつこっちに?」
「数日前に」
……嘘ならもっと上手く吐くよなぁ。
宗助さん頭良いみたいだし。
そこまで計算してるってなら、話は別だけど。
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