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ベクタの中心であり、サザランドの象徴。
サザランド城。
パッと見の印象は、純白の塊。
鋭角的な造形で荘厳さを漂わせ、その様は堂々と。
城の周りを囲む城壁は高く厚く、一般兵が百人居て、漸(ようや)く一日で破壊出来るかと言った強度を誇る。
それは勿論、何の妨害も無い事を前提として。
そして何より、ここは国内の魔法使いが最も多く集まる場所。
───否、「世界中で最も多く」だ。
それが、サザランドの最強たる所以(ゆえん)。
「……でも、宗助さんが敵に回ったとしたらどうなるんだろ」
「何が『でも』なのか分からないが、本人の隣で言うかソレ?」
「いや、独り言なんで気にしないでください」
無茶苦茶な事を言い、門を潜(くぐ)って城壁の内側へと入る。
城の正門前。
俺達を押し潰しそうな程重厚な扉が、巨大な生物の顎の様に開かれている。
こんな事を思う辺り、俺って不真面目だよなー。
「じゃ、行きましょうか。分かってると思いますけど、妙な真似は止めてくださいね」
馬を馬小屋に預け、キャヴェンディッシュ中尉と合流した俺達。
キャヴェンディッシュ中尉はまだ不機嫌そうで、俺が話を進めるしか無かった。
「そこは信用してくれとしか言えないな」
「どの口が言いますか」
「………」
キャヴェンディッシュ中尉はまだ不機嫌だ。
嫌がらせの様に長い廊下を無言で歩く事、約五分。
沈黙が五分は長いっての。
「城の中は随分と、入り組んだ構造になってるんだな」
空気の重苦しさに本気で嫌気が差してきた頃、宗助さんが言った。
「外はアレですけど、中まで入られるとヤバいですからね。その辺はしっかりしてますよ」
「だろうな」
「で、着きましたよ」
ある一つの扉の前で、俺は立ち止まる。
「キャヴェンディッシュ中将の執務室です」
ついに来た。
長かった廊下は終わった。
俺は扉をノックする。
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