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「それはそれとして。私達三人でする話は、ひとまず終わりで構わないかしら? Sirius systemの単体運用についての話は、後回しにしたいの」
にわかに真面目な表情となった飛鳥。
俺とミーアの両方に目を向け、問い掛けた。
始めようとしているのは、管理者権限についての話か。
「正直なところ、私個人としてはミーアにも聞かせて良い話だと───いえ、むしろ聞かせておくべき話だと思っているわ。けれどその判断は、私がすべきものではないから」
「グレーゾーンに踏み込んでいそうな表現だな、飛鳥?」
これで俺がミーアに話さなかったら、ミーアはどう思うのか、分からない飛鳥では無い筈。
いや、分かっているからこその発言だっただろう。
「何の事かしら。……とにかくそういう訳だから、ミーアには悪いのだけれど退室して貰えるかしら?」
いい加減なとぼけ方で茶を濁し、飛鳥はミーアに退室を求めた。
「仕方ないわね。色々小賢しい事を言ってるのが気になったけど、ここは大人しく言う事を聞いてあげるわ」
ミーアはそう言って椅子から立ち上がり、特にそれ以上は口を開く事も無く退室していった。
「確実に、後で質問してくるでしょうね」
「誰の所為だ、誰の」
愉しげな飛鳥には、いつか盛大に仕返しをしてやろう、と決意を固める。
「あら。さっきの私の発言が無かったとしても、ミーアはそうすると思ったのだけれど」
「『訊かれ方』が違ってくると、俺は思うんだがな」
そして黙るか、飛鳥。
笑顔のままで。
「……まあ良いさ。話を進めよう」
飛鳥と話をしていると、中々進んでくれない。
「妹が……、居たでしょう?」
───ッ!?
愉しげだった笑顔は、今もそれほど形を変えていない。
けれど、今はそれが酷く辛いものに見える。
───辛いのは、今の自分自身か。
意外過ぎる話の登場人物に、感情だけでなく理性すら追い付かない。
心拍のリズムはにわかに乱れ始め、果たして俺は冷静に飛鳥からの話を聞き取り理解する事が出来るのか。
「渡瀬瑠璃(ワタセ ルリ)。彼と貴方の実の父親、渡瀬宗一(ワタセ ソウイチ)の手により殺害された、渡瀬家の長女」
───。
ああ、そうだな。
「その名前」を聞いて、逆に冷静になる。
「娘殺し」の、奴の名前を聞いて。
氷河とマグマが心の中で共存している様な気持ちだ。
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