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師匠と飛鳥の二人を残して、私───ミーア=ファンクションは部屋を出た。
部屋を出る直前に飛鳥が言った言葉は、「師匠にしつこく質問しろ」って意味だったと解釈してる。
だから私は───、師匠に、「飛鳥がどういうつもりで私にそうさせようとしたのか」を真っ先に聞くつもり。
それで反応を見て、次の行動を決める。
……師匠にとって辛い話じゃないと良いんだけど。
でも、多分そうなんでしょうね。
傷口を抉る様な事は、私はしたくない。
私の大切な師匠なんだから。
という訳だから。
「ヴィル、ちょっと私に付き合いなさい」
私は相変わらず寂しいヴィルの部屋に来た。
ヴィルは何も無い部屋の真ん中に立って、唖然としてる。
「お前、ホントに俺に対して遠慮ってモンが無ぇのな」
唖然としたままそう言ったヴィルは、長くて大きな溜め息で締(し)めた。
「………。え、アンタに対して遠慮するって概念が無かったんだけど」
私とした事が、言葉の理解が少し遅れた。
「俺を何だと思ってやがる」
「便利な男」
「………………」
ヴィル、物凄い顔で見てくるわね。
「何よ、その顔は。別にそんな悪い意味じゃ言ってないわよ。そうね、うん、褒め言葉よ」
そういう事で。
私が言った言葉なんだから、私が意味を決める。
聞き手の受け取り方なんて知らないわ。
「……で?」
ヴィルが上がり調子に一音だけ発声した。
「で、って何よ?」
意図が不明瞭。
一体何を言いたいのかしら。
「何に俺を付き合わせるつもりなんだよ。話が進まねぇだろ」
……素直ね。
もっと反撃してくるかと思ってたのに。
まあ、不満そうにはしてるんだけど。
「訓練よ、接近戦のね。前と比べて大分慣れてはきたけど、まだまだ甘いし」
建前だけ話してみた。
いや、別に嘘じゃ無いんだけど。
「訓練っつー名目での気晴らしか」
「ヴィルの癖に見透かしてんじゃないわよ」
生意気な。
「いや、お前、一緒に居たらそこそこ分かり易いぜ?」
分かり易い男に分かり易いって言われた。
しかも、ちょっと笑いながら。
何これ、屈辱なんだけど。
「本気で叩き潰してあげるから感謝しなさいよ」
「百歩譲って『覚悟』までしかしねぇよ!」
ヤダ。
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