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「カラム=マクダネル、リーズロット=キャヴェンディッシュ。両名、只今帰還致しました。報告したい事があるので、入って宜しいでしょうか?」
ノックの後、扉に向かって言った。
「ああ、分かった。入ると良い」
すると、扉の奥から返事が来た。
「失礼します」
俺は扉を開け、部屋の中へと入る。
それなりに広い室内。
床には赤いカーペット。
濃い茶色のデスクが鎮座し、その奥には沢山の本が詰められた本棚。
そして聡明そうな顔立ちの、キャヴェンディッシュ中尉と同じ金髪の男性。
「報告したい事とは───、彼の事か?」
その男性───ヴィクター=キャヴェンディッシュ中将は、俺とキャヴェンディッシュ中尉の後に続いて入ってきた宗助さんに目を向ける。
「接触は避ける様にとの命令は聞いていたんですが、予想外の事が起きてしまって……」
苦笑しながらそう報告。
「オーリスとフィリスの間にある森で、偶然お二人と会いまして。その際に私が魔法を使い、捜索対象が私であると判断されたのですよ」
何処から報告するかと迷っていると、宗助さんが丁寧な言葉遣いで説明してくれた。
「彼はそう言っているが、事実に相違無いか?」
キャヴェンディッシュ中将の視線が、宗助さんから俺とキャヴェンディッシュ中尉に向けられる。
「中将」と「中尉」だけで良いやもう。
長いし、くどいし。
「はい、間違いありません。ただ一つ付け加えるなら、俺達二人はこちらの結城宗助さんに助けられた、と言う事です。特にキャヴェンディッシュ中尉は、命を落とす一歩手前でした」
「別に言わなくても良いだろう……」と言う呟きが、微かに聞こえた。
無視しよう。
俺の発言の後半で大きく目を見開いた中将は、驚愕の色が抜け切らないの顔を宗助さんに向ける。
「結城宗助……と言うのか、君は」
「はい、そうです」
何を言われるのだろうか、といった表情の宗助さん。
俺も心境はそんな感じ。
「有り難う。娘の命を助けてくれて、本当に」
そして出たのは、深い感謝の言葉。
それも、深々と頭を下げながら。
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