禍根

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 ───鎌かけか? 「そりゃ、魔力を入れたけど」  内心の僅かな動揺に蓋をして、顔に笑顔を張り付ける。 「……悪意は、無さそうですね。分かりました、これ以上は訊きません」  何で分かるかな。  キャヴェンディッシュの血かな。  いや本当に。  結局インスタンスを受け取ってくれたリーズロットさん。  俺は思わず、視線を横に逸らす。 「その、うん。確かに悪意は無いよ。むしろリーズロットさんにとってプラスになる事だと断言しておくし、宗助に見せれば一発で何をされたか分かる様な事をしてるから」  そんな事だから、リーズロットさんに詳細が知れると不都合が。  多分、予備タンクの解除条件を変更出来てしまうから。  ここからの脱出が、現実味を帯びてしまうから。  まあ「そんな事よりも」───、コレは嬉しい誤算だな。  想定を上方修正出来る。  期待値が跳ね上がった。  ただしあくまで期待値であり希望的観測。 「ああ、そうだ。サザランド陣営についての話がまだだった」  分かり易く反応を示すリーズロットさん。  興味は隠せない───と言うよりは隠すつもりも無さそうで。 「聞かせてください」  とても素直。 「ミーア=ファンクションが、アインの筆頭騎士であるアルヴァ=ラフトクランズを正面から破った。飛鳥からの補助を受けた状態で、ではあるけどさ」  つい最近の話だよ、と付け足す。 「あの深紅の目の騎士をですか。……飛鳥からの補助?」  何でアルヴァを知ってる風なんだ?  お互いに疑問符を浮かべ合う俺達。 「あ、うん。何かしら、関係性に変化が起こったみたいだね。ところで何でアルヴァを知ってるのかな?」  会わせた事、あったっけ? 「以前、彼がこの部屋を訪ねてきたもので。その時に幾つか言葉を交わしました」  ……いつの間に。 「どんな言葉を?」  何を話したんだ。  無性に気になるんだけど。  こちらのそんな気持ちを悟られない様、出来るだけ軽く質問した。  ……無意味だろうけどさ。 「さあ。『忘れました』」  笑顔で忘れたって言われた。  この顔で本当に忘れてる訳が無い。
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