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「顔を上げてください。私がお二人を助けられたのは、ただの偶然です」
やや慌てた様に宗助さんが言うと、中将はゆっくりと顔を上げる。
「後日、何か礼をさせて頂きたい。希望があれば、言ってくれ」
「いえ、本当に偶然なので───」
「それでは私の気が済まない」
宗助さんの言葉を遮り、中将が凄む。
別に脅してる訳じゃ無いけど、この表現がしっくりくる。
「……………では、珍しい本などがありましたら」
静かなのに凄味のある声と、迫力のある鋭い眼。
その二つに圧倒され、宗助さんは折れた。
「本、か。分かった。ところでリズ───いや、リーズロット。先程から一言も喋らないが、どうした?」
不機嫌な状態から未だ抜け出さない中尉に、中将が疑問をぶつけた。
「大した事ではありません。それよりも、本題に入りましょう。彼をここまで連れてきたのは、その為です」
うっわー……。
まだまだ不機嫌だな。
「……まあ、そうだな。では結城殿、こちらから質問をさせて頂くが宜しいか?」
深く触れると危険だと判断したのか、中将は中尉の言葉に従った。
娘に嫌われるのは嫌だったのかねぇ。
「ええ、どうぞ。承知の上でここまで来たのですから」
良く言うよ、宗助さん。
喋る気無いって、ハッキリ言ってたのに。
……いや、その後はそうなのか。
「では早速、質問させて頂こう」
違う世界から来たって、宗助さんは言うのかねぇ?
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