47642人が本棚に入れています
本棚に追加
/1048ページ
「まずは、これをご覧ください」
そう言ってユウキ殿がポケットから取り出して見せたのは……、何だろうか?
円形の部分と、同じ形が幾つも連結している部分がある。
……まさか、時計?
「見ての通り、時計です。非常に小型化され、誤差は一月で十五秒から三十秒程度」
やはり時計……、か。
しかしここまで小型の、しかもそんな高精度の時計は聞いた事が無い。
「誤差に関してはこの場ですぐに証明する事が出来ませんが、小型化がなされている事は明らかですね」
ユウキ殿はそう言うと、また別の何かを取り出した。
「次にこれですが───」
「待ってくれ」
だがそれは、父上の言葉によって止められる。
「私の質問の答えはまだなのか?」
質問をはぐらかそうとしているのかと疑い始めた私にとって、その言葉はまさに言って欲しいモノだった。
「まだです。突拍子も無い事を言うので、その準備が必要なのですよ」
ところがユウキ殿の返答は、至って堂々としたモノ。
「……そうなのか」
「そうです」
開き直っている様にも見えず、父上もこれ以上は言えないらしい。
「それでは説明させて頂きますが、コレは『携帯電話』と言う物です」
ユウキ殿は新たに取り出した何かを、パカッと開いた。
そこに現れたのは空洞では無かった為、入れ物では無いのだろう。
内側の片面には、四角く区切られた部分が幾つもある。
その内の一ヶ所が、押された。
「何ですか、それは!?」
内側の、特徴らしい特徴が無い方の───いや、「無かった」方の片面が、今は光っている。
更には何か、模様も浮き出てきた。
「主な機能は、同じ物を持つ離れた場所に居る人間と、会話をする事。尤も、単体では意味を為しませんが」
これも証明は出来ませんね、と溜め息を吐きながらユウキ殿は言う。
「ただ、『ディスプレイ』と言うこの長方形の枠内に文字を入力し、それを保存する事。そしてちょっとした『遊び』をする事なら出来ます。証明も併せて」
説明の間、ユウキ殿の親指が四角く区切られた部分を次々に押していく。
それと連動して、「ディスプレイ」と言うらしい四角い枠の中に、意味のある言葉が浮き出ていった。
「私は、異世界から来ました」。
最初のコメントを投稿しよう!