青い炎の魔法使い

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「まずは、これをご覧ください」  そう言ってユウキ殿がポケットから取り出して見せたのは……、何だろうか?  円形の部分と、同じ形が幾つも連結している部分がある。  ……まさか、時計? 「見ての通り、時計です。非常に小型化され、誤差は一月で十五秒から三十秒程度」  やはり時計……、か。  しかしここまで小型の、しかもそんな高精度の時計は聞いた事が無い。 「誤差に関してはこの場ですぐに証明する事が出来ませんが、小型化がなされている事は明らかですね」  ユウキ殿はそう言うと、また別の何かを取り出した。 「次にこれですが───」 「待ってくれ」  だがそれは、父上の言葉によって止められる。 「私の質問の答えはまだなのか?」  質問をはぐらかそうとしているのかと疑い始めた私にとって、その言葉はまさに言って欲しいモノだった。 「まだです。突拍子も無い事を言うので、その準備が必要なのですよ」  ところがユウキ殿の返答は、至って堂々としたモノ。 「……そうなのか」 「そうです」  開き直っている様にも見えず、父上もこれ以上は言えないらしい。 「それでは説明させて頂きますが、コレは『携帯電話』と言う物です」  ユウキ殿は新たに取り出した何かを、パカッと開いた。  そこに現れたのは空洞では無かった為、入れ物では無いのだろう。  内側の片面には、四角く区切られた部分が幾つもある。  その内の一ヶ所が、押された。 「何ですか、それは!?」  内側の、特徴らしい特徴が無い方の───いや、「無かった」方の片面が、今は光っている。  更には何か、模様も浮き出てきた。 「主な機能は、同じ物を持つ離れた場所に居る人間と、会話をする事。尤も、単体では意味を為しませんが」  これも証明は出来ませんね、と溜め息を吐きながらユウキ殿は言う。 「ただ、『ディスプレイ』と言うこの長方形の枠内に文字を入力し、それを保存する事。そしてちょっとした『遊び』をする事なら出来ます。証明も併せて」  説明の間、ユウキ殿の親指が四角く区切られた部分を次々に押していく。  それと連動して、「ディスプレイ」と言うらしい四角い枠の中に、意味のある言葉が浮き出ていった。  「私は、異世界から来ました」。
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