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「私をからかっていたのでは……無かったのですか?」
このサザランド城があるベクタに入る直前に、私がユウキ殿に言われた事。
それが文字に現れている。
幾ら何でもこの場面で、無駄な勘違いをさせる様な事はしないだろう。
「実は事実を語っていました……と。そう言う事ですよ、キャヴェンディッシュ中尉」
敬語?
呼び方も「リズ」では無くなっているし。
いや、それよりも。
「本当に、貴方は異世界からやって来たのですか?」
問題はここだ。
ユウキ殿の口から、肯定の言葉を聞きたい。
浮き出た文字などでは無く。
「そうです。まあ、貴殿方が信じるかどうかは分かりませんが。ですが少なくとも、矛盾した事は言っておりません」
そう、その通りだ。
あくまでも「矛盾した事は」言っていない。
しかし同時に、信じるに足るモノも無い。
先程見せて貰った二つの物品も、実はユウキ殿が魔法で造り出したモノなのかも知れないのだから。
とは言えそうなると、今度はどの様にしてソレを実現させたのかと言う、父上の質問に立ち戻ってしまう。
「では、質問の答えに戻りましょう」
その答えは、既に明らかだ。
事実であるかどうかは別として。
「私が青い炎を使える理由は、この世界よりも技術が進んだ異世界の知識を持っているからです」
……信じられる、のか?
判断に困り、私は父上とマクダネル少尉の顔を見る。
すると二人とも、難しそうな表情を浮かべていた。
私と同じ様な心境なのだろうか。
「それからその異世界には、魔法が存在しません。だからこそ、技術が進歩した訳ですね」
やはり、ユウキ殿の言葉に矛盾は無い。
果たして、信じて良いモノか。
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