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こんな意味不明な場所に来て、ふと思う。
「果たしてここは地球上なのか」、と。
馬鹿げた考えなのは、分かってる。
でも、この村に居た何人かの人間と会話をして、悉(ことごと)く何処か話が噛み合わなかった。
しかし、精神異常で勝手な妄想を繰り広げている人達には見えなかったし、村の人達の会話はきちんと整合性を保って行われていた。
だから、それは違う。
妙な宗教団体に、村人全員で入っているのだろうか?
それも違う様に思える。
この村の人達から、そんな弱さは感じられなかった。
至って逞しく、健康的に、自給自足の生活を続けている様にしか見えなかった。
分からない。
だからこそ、その可能性が頭から離れない。
俺と村人達とのズレが、あまりにも一定なんだ。
ここまで来ると、「俺の方がズレている」としか思えない。
ギギィ、と木が軋む音と共に、突然外の光が入ってきた。
扉が開かれたらしい。
そして似た様な音が再度鳴り、その光が収まる。
「こんにちは」
透き通る様な、若い女性の声。
牢屋の中で横になって目を閉じていた俺は、むくりと起き上がり声の主を見る。
腰まで伸びた、艶のある黒髪。
大きな黒目に、スッと通った鼻筋。
血色の良い、小さな唇。
身長は百六十程度だろうか。
ワンピースを簡略化した様な服を来て、こちらを物珍しそうに見ている。
「……こんにちは」
とりあえず、挨拶を返した。
「………」
しかし、無言。
相変わらず物珍しそうに、こちらを見ている。
「あの、何か……?」
このままでは居心地が悪いので───いや、もっと居心地が悪くなるので、俺の方から話し掛けた。
「うん」
「………」
「うん」では何も分からない。
「……何か、俺に用事があるんですか?」
今度は省略せずに言ってみた。
「お父さんが『素性の知れない男を牢屋に入れたから、近付くなよ』って、私に言ったの」
「貴女を心配したお父さんの気持ちを、無下にしないであげてください」
その「素性の知れない男」って、明らかに俺の事じゃないか。
「フフフ、大丈夫。だって貴方、危ない感じが全くしないから」
明るく笑って、目の前にやって来た女性は言った。
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