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ユウキ殿が城内の空き部屋に一ヶ月間寝泊まりすると言う事で、話は決着。
しかし、サクラ殿やアキヒサ殿にその報告をしなければならない為、私達は再びフィリスに向かう事となったのだが。
「いや、俺一人で大丈夫───」
「いいえ、駄目です。私も同行します」
城の入り口前で、私とユウキ殿は口論を繰り広げていた。
「逃亡はしないと誓う」
「そう言う問題では無く、私には貴方を監視する義務があるのですよ!」
「それは、俺が城に戻ってきてからでも良いんじゃ無いか?」
彼は私の同行を、頑なに拒んでいる。
「その様に無責任な事は出来ません!」
「途中の森で、守る側になるのは俺の方だよな?」
「ッ、それは今、関係の無い話です!」
「それならどうして、一瞬言葉に詰まった?」
………。
「任務と自分の誇りを、天秤に掛けた。そうだろ?」
「……その通り、です」
何なのだろうか、この人は。
私が何を言っても、それ以上の威力を持った言葉を返してくる。
「なら、行くか」
ユウキ殿が行ってしまうが、それを止める権利は無い。
私は立ち尽くすのみ。
「どうしたんだ、リズ? 行くぞ?」
数歩歩いた所で、ユウキ殿がこちらに振り返った。
「はい?」
「『はい?』じゃ無い。同行するんだろ?」
「そのつもりでは、ありましたが……」
ユウキ殿は、それに反対していたのでは?
反論出来なかった私には、その権利が無いのでは?
「無様に意地を張る様な発言をしたなら、問答無用で置いて行った。けど、そうじゃ無かっただろ。俺の負けだ。だから、監視を甘んじて受けるさ」
今の私は、きっと間抜けな顔をしているに違い無い。
この人の基準が、全く分からないから。
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