青い炎の魔法使い

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「やー……っと、一緒に行き始めましたね」  サザランド城の廊下の窓から外の様子───キャヴェンディッシュ中尉と宗助さんが歩く様を見ながら、俺は呟いた。 「マクダネル。お前が監視役を務めた方が、やはり順当だったのでは無いか?」  そんな事を言ってくれるのは、勿論キャヴェンディッシュ中将。 「順当は順当でしたよ? 先入観があると見落し易くなるって言っても、元の観察力が違いますから」  キャヴェンディッシュ中尉の目が節穴だって、そう言ってる訳じゃ無い。  単に俺の方がズバ抜けてるだけ。  そう断言出来るだけの実績は重ねてきた。 「でも、それを度外視するだけの価値がある気がしたんですよ、宗助さんには」 「『価値』?」 「そう、『価値』です」  良く分からないと言った表情の中将。  それを尻目に、俺は続ける。 「分かってると思いますが、魔法使いとして優秀だって事じゃ無いですよ。それも無視は出来ませんけど」  もしも無視する奴が居たなら、そいつは正真正銘の馬鹿だ。 「でも俺が今言ってるのは、人格の方です。強力な力を持っていながら、それに振り回される素振りすら見せて無いんですから」 「リーズロットの魔法使い嫌いを克服させる、と?」  流石は中将。  分かってらっしゃる。  でも満点じゃ無い。 「そのもう一つ上です。魔法使いの有用性をしっかり認識した戦術・戦略まで、考えられる様になって貰いたい」  他国との関係が悪化の一途を辿る今、軍人に出来るのは力を伸ばす事。  その為なら、異世界人だって利用する。 「更に欲を言えば、宗助さんにはサザランド軍に入って貰いたい。冗談抜きで、国一つと同盟を結ぶより価値がありますから」  あの人の力は、俺達に見せた程度のモノじゃ済まないんだろうから。 「お前がそこまで言うとはな。……結城殿に、何を視た?」  中将の眼が、光を帯びる。 「そりゃ勿論……美しくも力強い、青い炎ですよ」
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