47634人が本棚に入れています
本棚に追加
/1048ページ
何だか無駄に疲れた。
本気で心配されてたみたいだから、私とした事が油断しちゃってたじゃない……。
……まあ、向こうは知らないだろうけど、私がアイツの負担を増やしちゃった訳だし。
結果的には損害を減らせたって、分かってはいるんだけど。
でもそれは、あくまでカラムさんが上手く事を運んでくれたから。
私の功績じゃ無い。
私一人じゃ、施設を潰すまでは出来なかった。
ある意味、カラムさんは魔法使いだと思う。
魔力を扱って、世界に存在する事象を実現させる事。
それは出来なくても。
それでもカラムさんは、私より「強い」。
私には実現不可能な事を、幾らでも実現してきた。
私が目指す「強さ」は師匠のソレだけど、カラムさんの事も見習いたいと思う。
もし私が二人の「強さ」を手に入れられたら……と、思う。
思考を盛大に脱線させながら、着いた場所は医務室。
他に行く場所も無かったし、仕方無く。
「仕方無く、見舞いに来てあげたわよ」
清潔感漂う白い部屋の中。
奥の方に暑苦しい赤が見えたから、私は開口一番そう言った。
「もう少し素直になれねぇのか、テメェは」
その暑苦しい赤───ベッドの上でやや狭そうに寝ているヴィルは、私を軽く睨んでくる。
呆れた様子が見てとれた。
「具合はどうなのよ?」
私はそれを気にも留めず、ベッドの近くに寄りながらお決まりの台詞を吐いた。
「おう、熱っぽいぜ。身体が割とだりぃ」
ふにゃ、と気の抜けた笑顔を浮かべるヴィル。
良く良く見ると、確かに少し顔が赤い。
「……仕方無いわね」
薬品に関しては手を出して無い私にも───冷却シートくらいは実現出来る。
そのシートを右手に持ち、ヴィルの額に貼り付けた。
「お? 何だこりゃ?」
「それで少しは楽になるでしょ。暫(しばら)くは冷たいままだから、そのまま貼っておきなさい」
じゃあね、と言って、私は医務室を出ようと踵を返す。
「何だよ、案外優しいじゃねぇか」
私は聞こえなかったフリをして、そのまま直ぐに出ていった。
最初のコメントを投稿しよう!