銀色

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 何だか無駄に疲れた。  本気で心配されてたみたいだから、私とした事が油断しちゃってたじゃない……。  ……まあ、向こうは知らないだろうけど、私がアイツの負担を増やしちゃった訳だし。  結果的には損害を減らせたって、分かってはいるんだけど。  でもそれは、あくまでカラムさんが上手く事を運んでくれたから。  私の功績じゃ無い。  私一人じゃ、施設を潰すまでは出来なかった。  ある意味、カラムさんは魔法使いだと思う。  魔力を扱って、世界に存在する事象を実現させる事。  それは出来なくても。  それでもカラムさんは、私より「強い」。  私には実現不可能な事を、幾らでも実現してきた。  私が目指す「強さ」は師匠のソレだけど、カラムさんの事も見習いたいと思う。  もし私が二人の「強さ」を手に入れられたら……と、思う。  思考を盛大に脱線させながら、着いた場所は医務室。  他に行く場所も無かったし、仕方無く。 「仕方無く、見舞いに来てあげたわよ」  清潔感漂う白い部屋の中。  奥の方に暑苦しい赤が見えたから、私は開口一番そう言った。 「もう少し素直になれねぇのか、テメェは」  その暑苦しい赤───ベッドの上でやや狭そうに寝ているヴィルは、私を軽く睨んでくる。  呆れた様子が見てとれた。 「具合はどうなのよ?」  私はそれを気にも留めず、ベッドの近くに寄りながらお決まりの台詞を吐いた。 「おう、熱っぽいぜ。身体が割とだりぃ」  ふにゃ、と気の抜けた笑顔を浮かべるヴィル。  良く良く見ると、確かに少し顔が赤い。 「……仕方無いわね」  薬品に関しては手を出して無い私にも───冷却シートくらいは実現出来る。  そのシートを右手に持ち、ヴィルの額に貼り付けた。 「お? 何だこりゃ?」 「それで少しは楽になるでしょ。暫(しばら)くは冷たいままだから、そのまま貼っておきなさい」  じゃあね、と言って、私は医務室を出ようと踵を返す。 「何だよ、案外優しいじゃねぇか」  私は聞こえなかったフリをして、そのまま直ぐに出ていった。
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