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盛太郎は小さい時、祖母が大好きだった。全てを包んでくれるような優しさを持った祖母が。
祖母には口癖があり盛太郎はいつもそれを聞かされていた。未だに声までが鮮明に再生することができる。
「盛ちゃん、うんこは汚くないんだよ。うんこは友達なんだよ。」
それが嘘では無いことを証明するように祖母はいつもウンコを漏らしていた。
痴呆ではない。祖母の理屈で言えば汚くないし友達なのだから、時と場所を選ばずに出たがったら出してあげるというわけだ。
しかし、世間はそれを許容しない。常識という大きな敵に祖母はいつも狙われていた。家の中でも外でもところ構わずウンコを漏らす祖母に家族も他人も冷たかった。
盛太郎だけは祖母が好きだったので、怒られながらも祖母の真似をして好きなところでウンコをした。迫害を受けながらも幸せに祖母と過ごしていた盛太郎だが、その日々は唐突に終わりを告げた。
ある夏、腐った豚肉を生で食べた祖母が酷い下痢になった。止まらない下痢に祖母は己の死期を悟り、空の風呂に座り込んだ。みるみるうちにウンコは風呂を一杯にし、祖母は溺れて亡くなった。
レスキュー隊を呼んだのだが
「我々は人命救助のプロですが…この大量のウンコでは手が出せません。残念です…」
と役には立たなかった。泣き叫ぶ盛太郎に最後の力を振り絞って、囁いた言葉がある。
「うんこはともだち。うんこを憎んだらいけないよ。」
盛太郎がうんこに対し複雑な思いを抱くようになった悲しい過去である。
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