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いくつもの絵の具を混ぜ合わせたような、極彩色の空間が広がっている。
赤。
青。
緑。
黄色。
……etc、etc
無数の色が交じり合う空間の中に、また無数の時計が浮かび、漂っている。
大きな時計、小さな時計、四角い時計、丸い時計……そこにある大きさ形同じものがどれひとつとしてない時計たちは、それぞれが歪んだ時を刻んでいた。
―― 時間の狭間。
ありとあらゆる時間が刻まれているこの空間では、方向も距離も、何の意味もなさない。
ただ、空間のみがねっとりとまとわりつくようにそれぞれの未来へと流れていた。
そんなゆったりとした流れを引き裂くかのように銀光が走った。
鋭い牙が真っ白な頬をかすめ、滲んだ血が少女の鼻筋をつぅっと伝って流れ落ちる。
長い黒髪がほつれて、どことなくあどけなさを残す少女の顔にまとわりつく。
痛みもあるのだろう。
表情をゆがめながらも、少女の目はまっすぐに相手を捉えていた。
逃がさない――。
無言の視線からその意志がはっきりと伝わってくる。
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