第四章 ハルボードの実態

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「ところで」  したがって俺は右に視線を送り、口を開いたスノウに目を向けた。 「日が落ちているせいか知らぬが、なにやらこの街は少々活気が乏しいのではないか?」  この場の皆に問いかけた形だ。  俺には思い当たる節はなく、そのままメインディッシュの厚さが三センチはあろうかというステーキを口に運んだ。  うん、美味い。 「そういえば、すれ違う人も少なかった気がします」  と、メリルが応えた。おそらくここまでの道程を思い出しているのだろう、その顔は少し思案気だ。 「……この店も、客の姿が見えなかったように思います」  フィオナも控えめに口を開く。  みんな、この街で何かしらの違和感を覚えたらしい。  ……あれ? 何もないの俺だけ? 「大通りにある店の数や種類を見る限りにおいては、まだ賑わっていてもよい時分だと思うのだが……」  スノウはそこで考え込む仕草をする。  確かに、城下町ほどではないにしろ、結構大きな街だけど……。 「そんなに気にすることなのか?」  なんだか真面目な話のようなので、食事の手を止めてスノウに向き直った。
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