第四章 ハルボードの実態

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「……これは、私の尺度の話なのだが」  一度前置きをして言う。 「昼間の賑わいはその街の発展を示し、夜の賑わいはその町の治安を示す、と思っている」  なんというか、言い得て妙だな。  その基準で言うと、この街には活気がない、どころかあまり人を見かけないとのことなので……。 「ってことは、少なくとも治安が悪いって事にはならないんだろ?」  確かに気になるのも分かる、というか同意だ。危険な街に長居したくないからな。 「…………まあ、大抵の場合はな」  しかし、スノウの歯切れは悪い。  気になっているのはそこではないようだ。  そこに「私見ですが」とフィオナが合いの手を入れてきた。 「……考えられるのは、夜は出歩かずに家の中にいなければいけないのか、仕事終わりの夜を満喫しようという気力さえないのか、もしくは、そもそも夜に出歩く人がこの街にはいないのか。――恐らくそんな所かと」  相変わらずの、小さな声音だが聞き逃すことはないという、絶妙な音量と口調である。
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