第四章 ハルボードの実態

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 しかし、俺の言葉にスノウは予想外の言葉を返してきた。 「そのような重大な話をお主が私達に対して話さなかったということだ!」  スノウはどんどんと言葉で俺に詰め寄ってくる。  だがそこで自分自身の感情の昂りに気付いたのか、一度深く息を吐いた。 「これは皆の旅で、皆の計画だ。なのにお主は情報を共有しようともせず、話さずとも良いと考えた」  しかし、問い質す彼女の姿勢は変わらない、どころか、叱り付けるかのような言い方だ。 「いや、あくまで不確定な噂の話だったし、今だって本当に病気なのかも分からないだろ?」 「だから、そういう話ではないと言っている。――お主、本当にメリルを助ける気があるのか?」 「――はぁ?」  スノウはいつも言い方が直球というか、あまり歯に衣着せぬ物言いをしている。  最初は大分イラッとしたが、最近ではコイツの素直な態度だと思える様になってきていた。  だが、今の言葉は聞き流せない。  彼女は俺の言葉に多少驚きの表情を見せた。  怒声やら罵声は浴びせたことはあるが、こんな怒り方はした事がないからだろう。  頭の中は妙に冷静で、しかしふつふつと沸き上がる何かが、頭の隅にはあった。 「……お主は、これが他人事だとでも思っているのではないか? 計画は全て私とレインで立てた。協力こそすれど、中心に混ざることはない。私の計画も最初の、それも概要だけ聞いて終わりだ」  スノウは早口に、しかし問い詰める調子は崩さない。  俺がこの件を他人事? ……そんなことあるわけないだろ。 「国を出ることさえ、お主はその時になって聞いただろう。国を出て何をするのかさえ、お主は聞かなかった。本当に助けたいと思っているのなら、もっと積極的に、計画の全てを聞こうとしていたはずだ。違うか?」
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