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「罪人、メリル・ノガルドロースを国家反逆の罪により──死刑とする」
裁判長、ダラス・ディゴリーの鶴の一声で、メリルの刑が確定した。
傍聴席にいた俺は、絶句するしかなかった。
……王様は、罪を許してくれてたのに。
しかし、今はそれ以上考えられなかった。
なぜだ、と叫びたい衝動をぐっと堪えるのに精一杯だった。
俺は言葉どおり傍聴者だ。
ここでの不用意な発言はメリルを不利にするだけ。
だから黙って、堪えて、見届けるしかない。
だが。
「では──」
またしても、裁判長の声。
死刑なんてことを、さらりと言ってのけるような人物だからだろうか。
ぶかぶかのローブは、この場における正装だろうが、俺には彼の締まりのなさそうな体型を隠しているようにしか見えない。
ゴテゴテした指輪をぎらつかせ、初老を迎えて頬にこけるようなしわを作っている。そしてその目つきは、醜悪の一言に尽きた。
いかにも小ずるい事を考えていそうな、俺の世界の時代劇に登場する悪代官そのものだ。
「これにて当法廷は閉廷とする。刑の執行は二週間後に行う」
小高い木槌の音を数度鳴らし、彼はその言葉と共に法廷を去った。すぐ後を他の裁判員が続く。
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