第一章 勇者の愚行と少女の未来

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 直後、法廷は厳粛な空気を捨て、ざわめきで満たされた。  ……終わり?  異議どころか発言すら認めず、一方的に自分の言葉を通すのみ。  時間にしておよそ三十分弱。  皆が集まってからの待ち時間の方が長く感じたくらいだ。  この国の裁判は、いつもこんな形をとっているのだろうか。  検事も弁護士もいない。  罪人と数人の裁判員が顔を突き合わせ、罪状を読み挙げる。そして裁判員たちでしばらくの間ボソボソと話し合って、それで判決。  それだけ。  弁解も何もない。  言ってみれば、裁判の形式だけ取ったただの死刑宣告だった。  ざわめきの収まらなかった法廷が、しだいに人がまばらになり始め、静寂の割合が増えてきた頃。  俺はメリルの姿を初めて意識に捉える。  俺の位置からでは彼女の後ろ姿しか見えないが、その背中はとても小さく見えた。
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