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そこでようやく、俺は今自分がただ立っているだけの人形に成り下がっていることに気がついた。
何をやっているんだ俺は……!
「メリル!!」
俺は思わず叫んでいた。
彼女はその声にゆっくりと振り向いた。
ビキニタイプのボンテージ生地の衣服は肌色成分多めで、特撮ヒーローものに出てくる女怪人のようだ。
肩辺りで短くカットされ、しかしボリュームのある黒髪は、ふわふわとして彼女本来の柔らかな雰囲気を引き立てる。
そしてなにより、羊のように歪な捻れを作り出している二本の角が、彼女の種族を主張している。
「マサキ……さん」
彼女は悲しみで顔をくしゃくしゃにすることも、呆然と虚ろな目をすることも無かった。
ただ、諦めたように小さく、力なく笑うだけ。
まるでこうなることが初めから分かっていたかのような。いや、むしろ、こうなることを望んでいたかのようだ。
衛兵に連れて行かれるメリルの光彩のない瞳がこちらを捉えて、そこでやっと、俺はようやく彼女の意図を理解した。
自分の死を望んでいる。
でも、どうして?
あいつは生きたがっていたはずなのに。
そう。思い込んでいるのだ。
自分の罪は死ぬことでしか晴らせないと、そう思っているのだ。
勝手に。
「馬鹿野郎が……!」
ギリ、と歯を食いしばる。
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