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予想に難くない結果に、神に仕える熾天使でありながらも止めることはしなかったセラフィム。
今の破壊神に馬乗りになってタコ殴りする普通とはかけ離れた少女を止めることは至難の技。
家族か大切な友人だと少女自身が認識している人物ではないと、今の放送禁止用語を吐きながら顔を重点的に殴る少女を止めることはできないのでセラフィムの判断はある意味では正しかった。
たとえ、真琴の不注意から起こった災難だと理性が訴えかけて来たとしても、本能は無心を貫いた。
誰もメリケンサックをはめた拳の餌食などになりたくない。誰も小柄な体から殺気と似てる異様な空気を発しながら今度は神を亀の甲羅を彷彿させる縛り方をし鞭をしならせ始めた少女の餌食などになりたくない。
ただナイーブな神が一人、両手で顔を覆い震えていた。
少女の従兄に植え付けられたトラウマが再発したのだ。
あちらが使用したのはメリケンサックでも鞭でもなく、愛用する木刀と脚力であったが感じた恐怖は大差ない。
ぐるぐる回る少女が起きる前の出来事に思考が奪われ冷静さを失っていく神はパニックに陥る。
「――もう嫌だぁああああ!!」
泣きっ面に金切り声で突然叫んだ世界神に驚いて振り返った少女真琴は、その姿を拝む前に意識を飛散させ強制終了――異世界トリップ――させられた。
その場に残されたのはやっちまったとべそをかく世界神とそんな世界神に哀れみの視線を送る熾天使セラフィム、痛みを快感に変え新たな境地に達した破壊神、そんな異様な光景だった。
「……世界に影響ないくらいの潜在能力を引き出させ、三ヶ月経ってちゃんと許可を取ったときにチート級の力を与えるとかにすればよかったかな……」
ボソボソとつぶやいたセラフィムは遠い目をしながら“無力な”少女の生活を予想する。
嗚呼これは死ぬか殺されるな、と全員の思考が一致してしまった瞬間、神二人に天使一人は通常業務をこなすためではなく自らが作り出した厄介事に最善を尽くすためにそれはそれは俊敏に仕事部屋に戻っていった。
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