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すると動こうとする意志に反して石のように動かなかった体が途端に動くようになり目を見開く。
ただ宙に留めてくれただけありがたかった。いきなりバランスをとるなんて芸当、当たり前に真琴にはできないからだ。
「はい、どうぞ」
「うは、ありがとうございます」
体を空中でひねり、地面に足を着いてホッと吐息をもらしたまさに絶妙なタイミングで目の前に立つ真琴の身長を遥か凌駕した長身に内心羨ましいと感じながらも差し出されたストローの刺さったままであるコーヒー牛乳のパックを受け取る。
「いえいえ、こちらの不手際でしたのでお気になさらないでください。あぁ、自己紹介をしますと私は世界神様の補佐をする熾天使(シテンシ)のセラフィムと申します。セラフとお呼びください」
「セラフさん、ですか。私はなんか知られてる通り“平凡少女”改め若宮真琴です」
「えぇ、存じております」
早速といった様子でストローに口を付けた真琴にニコニコと微笑みながら名乗ったセラフ改めてセラフィムに真琴は納得したと頷き自らも名乗る。
そしてふと思い出したことを口にした。
「熾天使セラフィムって、確か三対六枚の翼を生やす最高位の天使ですよね。一対で顔をもう一対で体を隠して残りの一対で飛ぶとか」
「あぁ、地球に降り立つときはそうさせてもらってますよ。だって三対もあったら飛びづらいでしょう?」
目の前で何処からともなく現れた白いテーブルセットの白い椅子を引き出して腰掛けるよう促しながら答えたセラフィムに真琴は遠慮がちに腰を据えてまた頷く。
「思います。小さいときに読んだ花咲天使に出てくる天使を見ていつもどうやって飛ぶんだろうって考えてました」
「あの漫画ですか。あれに出てくる主人公は突っ込みが凄まじいですよね」
「貧乏クジを自分で引くお人好しには参りますよねー」
「「あはははは」」
「……なんか仲良くなってるし……」
世界神と呼ばれた方の男性は、自らも同じテーブルの椅子に座るも話に入っていけず、今ではコーヒー牛乳を片手にすっかり意気投合した人間と補佐の熾天使に複雑な思いを抱く他なかった。
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