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ガラスの器の上を彩るお菓子に手を伸ばし、若干疎外感を抱く世界神に気付いたのか、セラフィムはパックをテーブルの上に置く。
真琴は飲み干したコーヒー牛乳に寂しさを感じながらも漫画の内容で語らっていた人物の急な真顔に自らも気を引き締める。
「さて真琴さん、本題に入りますね」
「えぇ、どうぞ。もう聞く覚悟は整っていますからどーんと来いですよ」
十分に時間をもらえ尚且つ言葉を交わすことで落ち着けた真琴の穏やかな声音での言葉にセラフィムは頭を下げてから、重い口をあげる。
「あなたはファンタジーなどの小説や漫画が好きでよく読んでいるので知っているかもしれません。実は今、地球とは別の世界が破滅の危機に陥っていまして……」
「魔界に住む王――魔王より魔神じゃねって思うくらい強い魔王が何故か世界を支配しようとしていてね、しかもイレギュラーな要因が絡まっててその世界の人間だけじゃ心許なくてねー……一応主人公格と呼ばれる世界の勇者は存在するんだけどね。まぁ潜在能力がその魔王を凌ぐ人間を地球からよこせってあちらの世界神におど……お願いされてさ」
真琴は暗い面持ちになる世界神のセラフィムから引き継いだ内容に目を伏せる。
もうそれ以上の言葉はいらなかった。必要なかった。
やはりというかなんというか、真琴はまた従兄に関わることで巻き込まれたのだ。
アニメや漫画、小説だけの特有な絵空事のようにしか感じられない出来事に。
「つまり、私の従兄が勇者として大抜擢されて、魔方陣を使って早速呼び出そうとしたところ、なんらかの手違いで傍にいた何故か時間も止まっていない人間を巻き込んでしまい今に至る――そんなところですか」
「返す言葉もございません」
申し訳なさそうに頭を下げ続けるセラフィムと世界神に真琴は苦笑をもらす。
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