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ただ内心は信じられない気持ちでいっぱいなのだが、彼らの目は怖いくらい真剣だ。
こんな五感も働く夢を見るほど想像力がたくましくない真琴にとって、疑う気持ちはさほど残っていなかった。
「召喚された従兄はどうなったんですか?」
お菓子を咀嚼する音しか響かないような重い沈黙が降り立つ前に真琴はそう二人に問い掛けた。
「従兄――悠太さんにはある程度の説明をして理解を得、いろいろとまぁ……罵倒されてからあちらに召喚させてもらいました」
「ぶっちゃけあんなに神とか天使に啖呵切る人間初めてだった。なんか怖かった。目線だけで射殺されるんではないかと思った」
ただ二人にとってそれは地雷だったみたいで、一気にガタガタぶるぶると顔を可哀相なほどに青ざめさせて全身を震えさせる神と天使の姿に真琴は目を見張る。
一体何をしたんだとこれには疑問を抱いた真琴は、今も尚心の中で彼らを罵倒し続けている従兄を思う。
「……あ、取り乱してしまい申し訳ありません。つまるところ、真琴さんの巻き込みは想定外でありまして……そのこちらの世界の時間は止めてしまったので戻すこともできず、しかし神界に人間である真琴さんを長時間留めることが叶わないのでどうしようかと話し合っていたのです」
「それで目が覚めたときに聞こえた力を与えて丸投げしよう発言ですか……」
「いやあのね真琴さん、セラフに呼ばれてついよそ見しちゃってね、寸で魔方陣が広がっちゃってキミまで呑み込んじゃって……しかもどうやったってキミの時間が止まらないし、説明したらキミの従兄は死神じゃなかろうかってぐらい怖いし、もう嫌になってしまいました」
次に会ったら殺される、と本当に小さな声でこぼした言葉に真琴は何をしたんだとまた思う。
これほど神にトラウマを植え付けた従兄の凄さには素直に賞賛したいかぎりだが。
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