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リアルガタブルをしかと見届けた真琴は、咳払いを一つしたセラフィムの次の言葉を待つ。
その手には、何故かピリ辛な柿の種と呼ばれるおつまみに酷似したものが掴まれていたが。
「えっと、それでですね、真琴さんにはあちらの世界でイレギュラーとしてちょっと滞在してもらいたいのです。ちゃんと力も与えますので日常生活には支障はないと思います」
「最強じゃなくてチート級の力に魔力も授けるし、別にキミに規格外魔王を倒してって言ってるわけじゃなくてね? あ、でも行って最初の三ヶ月間は隠れていた方がいいかも」
「何故ですか」
バリバリとピリ辛お煎餅を噛み下しながら、真琴は世界神を冷たく見据える。
当の世界神は真琴の瞳に類似するものを重ねてしまいセラフィムに視線で助けを求めるも、セラフィムも死神や肉食獣に喰われてしまうような獰猛な光を揺らめかす瞳に恐怖心が蘇り視線を合わせないようにそっと逸らす。
二人は同時に思った。この子は間違いなくあちらに召喚した人間の従妹であると。
「……何、故、で、す、か」
真琴から発せられるプレッシャーは嫌というほど脳内に刻み込まれた勇者として送った人間と同等かそれ以上であった。
一日で二回も味わう泣きたくなるような怒気にさらされた世界神は内心脱兎のごとくこの場から逃げ出したくなる。
神とて怖いものは怖いのだ。
人間と同じような感性を持つ一つの存在として、小動物のような脆弱な雰囲気をまとっていたかと思えば言葉一つで死神か鬼神のような鋭く恐ろしい雰囲気に様変わりする若宮の姓を持つ人間に恐怖を抱かずにはいられなかった。
「(……本当に人間なのでしょうかねぇ……)」
人外の存在にそう認識されてしまったことに、真琴は微塵も気付かなかった。
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