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「魔神クラスの魔王に匹敵する悠太さんの潜在能力を引き出すだけなので、実際は楽なものです。ただそんな力は持っていたとしても世界に影響がありますから、引き出すにも許可を得なければいけないのです」
「用意していたのは私とあちらのほんのちょっとの力。魔力とかないと魔法も使える万能勇者って伝わっている手前じゃやっぱマズイからね。なんでそんな伝説を作ったのかな、あっち」
「それよりもいちいち許可を得るのに、あなた様とあちらの世界神様に造物神様、動力神様を交えて会議なんて面倒ですよ」
一度出てきてしまった愚痴が止まることを知らずに二人から吐き出されるのを流し流しで聞いていた真琴の耳に、さりげなく第三者の声が入ってきた。
「なら事後報告にして、先に力を渡せばいいんじゃないの? あ、真琴だっけ? これどうぞ」
「あ、すみません」
にっこり笑顔を浮かべたこれまた絶世の美形が何処からともなく、文字通り“床から取り出した椅子”に腰を掛けながら、手渡してきたガラスのコップを真琴は受け取り、とりあえず警戒レベルでちょっとだけ口に含み喉の渇きを潤す。
この場に心配性の悠太がいた場合、「知らないヒトから渡された物は受け取っちゃダメって言ったでしょ!!」と目を三角にして説教すること間違いないが、そんなことはすでに意識の外。
鼻につく香りは不快を感じず、喉を潤した液体はほんの少しにも関わらず蜜のように甘いもので、真琴はそれを煽るように飲み干したのであった。
その表情はご満悦と語っていて、それを横目で確認した第三者はにっこり笑顔を崩さずに口角だけをにやりとあげるも誰もそれは見抜けなかった。
「んー……いやいやいや、事後報告なんかしたら面倒事が増えるからあまりしたくない。気がまったく進まない」
「思い切りがないからマニュアルしか作れないんだよ。マニュアルは作り出せてもそれ以上いかないのは日本人によくあるんだよ」
「いやいや、私神様だから。日本人違うから――って、あれ」
さすがに第三者の介入に気付いた世界神は、一足先に気付いたセラフィムと同様に固まった。
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