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異様となった空気に首を傾げた真琴が視界の中に入ったセラフィムは嫌な予感がした。
真琴にも隣に座る灰色の色彩を凝視したままの主にも気付かれないようにそろりと視線を走らせ手元を見れば、コップの中に微妙に残っている液体の色でその予感は的中する。
違う意味で愕然としたセラフィムの様子に目ざとく気付くも、手を挙げて灰色の長い髪と瞳を持つ、服まで濃淡はっきりな灰色の美青年は軽い調子で言った。
「あ、自己紹介するね。僕は破壊神、すべてを破壊して最終的には世界をなんちゃって破壊する神様でーす。ちなみにそこの世界神よりは位が上だよ」
「初めまして、平凡少女こと若宮真琴です。イレギュラーだけど非力な人間です」
何処か遠い目をしながら返した真琴に笑みを深める破壊神と名乗った青年。
もうなんでもいいや、と諦めにも似た心境で真琴は力なく笑うも、破壊神の、
「この空間で勝手に目覚められるなんて、もう人間とは呼べないと僕は思うかな。あ、今まさに人間やめたところか」
「……は?」
聞き捨ててはならない言葉が耳を掠め、真琴は間の抜けた声をもらす。
「今キミが口にした飲み物は神界限定ネクタルでーす。甘いでしょー僕はあまり好かないけど。ギリシャ神話に出てくる飲み物なんだよ」
「……効果は、確か……」
顔を傍目からでも確認できるくらい紙のように白くさせ震える真琴に、破壊神はこともなげに言い放った。
「えへ、人間が飲むと不死になっちゃう不思議な飲み物さ!! 実際は薬として飲ますんだけどね」
最後は最高に腹立つような「ごめーんね」と語尾に星マークが付くような軽い調子でキャピッと謝った。
ウインクをした絶世の美青年の顔に真琴の拳がめり込んだのは数秒もしないうちだった。
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