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「僕、お人好しで生きていけるんだったら、この小説の中の異世界で長生きできそう」
「やだー悠ちゃん、それだったら私も長生きできるってー」
「あはは、それもそうだね」
「……お前らの何処がお人好しだ真っ黒腹黒」
「お兄、今すぐその減らず口を木刀の餌食にしてもいいんだよ」
「ってか真っ黒腹黒って、新種の真っ黒黒須家?」
「悠太、それ漢字変換ちゃうし」
「「あ、逃げた」」
「俺にどうすれと!? 兄をなんだと思ってやがるこんちきーっ!!」
「……何、このカオス。兄ちゃんデュエルしよ」
「お前は勉強しろ、受験生」
――そんな夢を見た、と認識したときは涙が出そうになった。
ここにはそんな愉快で不快な兄弟はおらず、いたとしても場所すらわからない。
真琴は出かけた当初の黒いコートにジーンズ姿からこちらの質素な服装に変わったのを一瞥して仰向けのまま溜め息を吐く。
「……あのクソ神、次に会ったら四の字固めしてやる」
彼女の溜め息のあとに吐いた言葉は不吉なのに、声は細く震えていた。
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