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結果だけを記すなら、真琴は生きていた。
突き刺さったら一溜まりもないような鋭く尖る角に手を伸ばし、そして掴み狼モドキが上に頭をあげる遠心力を利用し回避するという無謀な行動をとったのだ。
なんとか成功させた真琴は息吐く間もなくそのままぽっかりと空いている天井の穴に吸い込まれるように投げ出される。
追い打ちに狼モドキは口から青白い色をした塊を吐き出してき、真琴は空中で回避できるわけもなく直撃してしまう。
そのとき真琴は確かに死を感じた。死が訪れた――はずなのだ。
青白い塊が腹に風穴を空けたのをこの目で見、打ち付けられた体に息が詰まるも競りあがって来たものを吐き出した。
狼モドキに赤が散ったのもはっきり覚えているし、自分の体が力なく土の地面に転がっている今の状況も理解している。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃいいいいいあぁあ亜あアァああ」
体を突き抜ける激痛。視界が真っ赤に燃え上がり、激痛激痛激痛。もはや痛いより熱い、なのに苦しい終わりが見えない。
終わらない激痛の嵐。
涙をあふれさせ真琴は叫ぶ。叫ぶ。叫ぶ。
顔が裂けるのではないかと思うほど口を開け、赤にまみれた少女は狂ったかのように叫ぶ。
途中で叫び声は擦れていき終には途絶え、ぐったりと横たわり死に絶えたかのように見えた。
――なのに真琴は生きている。止まったかのように見えた胸が上下していることで、獣は目を剥く。
狼モドキはそんな少女の姿に疑問を抱く。生きているはずがない、生きているわけがないと知性ある獣として頭の中で否定する。
しかし少女が叫びのた打ち回っていた事実は変わらない。
なら今度こそは亡き者にしようとにじりよっていた狩る者がぐったりと横たわる少女の風穴が空いた腹の光景を目の当たりにするまでは、そう思考していた。
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