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律儀に状況を教えてくれる研究員二に真琴はそう答えると、目の前に透明な水晶玉を差し出される。
差し出してきたのは、黙って手を動かしていたメガネをかける男だった。
記憶に間違いがなければ、研究員一と呼ばれていた者だろう。
「奇遇だな、俺もさすらっていたときに攫われたんだ。ここは飯が出るがいけすかない場所だよ。とりあえず測定だ、触れろ」
言われた通りに水晶玉に触れるがなんの反応もない。
それを確認して研究員一の隣に紙とペンを持ち何かを書き込む研究員六は、静かに口を開く。
「今の世界は、魔王が戦争を仕掛けると宣戦布告されてピリピリ状態。そしてここは魔王が統括する魔界にある“業を背負う者”を研究員として収容し、兵器を作り出す施設。キミはその兵器候補の実験動物だよ。一緒にいた一角狼もそうだよ」
「……何故、わざわざ説明するの? 状況がわかってなかったからありがたいけど」
疑問符を頭の上に出現させる真琴を一瞥し、研究員二が口を開く。
「最初に必ず説明するのがアタシ達のやり方。何も知らせずに測定完了させて実験に入る研究員もいるけどね」
「つまり俺達は甘いんだとよ。戦争しようとする輩からすりゃそうだろうがな。次はこれに触れろ」
次に差し出された水晶玉は一回り小さく、真琴は少し自分の不幸に泣きそうになりながらそれに触れた。
やはりそれも変化はなかった。
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