序章:それは平和な日常。

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ジグソーパズルをしていた手を止めて真琴は立ち上がり、長い間座りっぱなしで凝ってしまった体をひねったり伸びたりしてほぐしてから部屋の扉に向かう。 その後ろを当たり前のように悠太はついていき、真琴とともに部屋から出てリビングに向かう。 そのときちょうどキッチンから顔を覗かせたこれぞ大和撫子のような艶やかな美人がにっこりと微笑み、形の良い口を開く。 「おはよう、まこちゃん。悠太もご苦労様。朝ご飯用意終わってるから食べちゃってね」 「おはようございます、沙恵さん。いつもありがとうございます」 大和撫子と呼ぶに相応しい美人な女性、若宮沙恵は真琴の言葉にとろけるような笑みを浮かべて真琴のその小柄な体を抱き締める。 「うふふ好きでやってるんだからまこちゃんは気にしなくていーの。もう本当に可愛いんだからっ」 より一層強く抱き締めてから満足そうに解放すると、沙恵はまたキッチンに引っ込んだ。 真琴はちょっと照れ臭い気持ちを隠すように眉を寄せ気難しい表情を浮かべてキッチンの横を通り過ぎる。 そんな真琴の表情の変化に目ざとく気付いていた悠太はクスクスと笑いながらもあとを追う。 自分の定位置である椅子に座る真琴に睨まれたのは、悠太にとっては想定内のことなので気にしなかった。 悠太が席に着いたのを確認して、二人は同時に手を合わせる。 「「いただきます」」 そうして真琴の兄弟不在の冬休みに入ってからは恒例となった朝のひとときが始まる。
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