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追っ手の中でも魔法専門なのはオモチの技を防いでから後方に下がった二人、あとは魔法を駆使しながら突っ込んで来ようとする数人。
真琴はこの世界に落とされたときに着ていた質素だっただけの今ではすっかりくたびれボロくなった茶色のズボンのポケットから白いハンカチを取り出す。
そこには地面に書かれているものとはなん箇所か違う転移魔方陣が赤で書かれていた。
『嬢ちゃん、どうす――って、なんだそれ』
「カマさんがくれたハンカチ。赤色なのは自分の血で書いたから」
『聞いてないことまで律儀だな、嬢ちゃんっ!! それをどうする気だ!?』
「キャンキャンうるさいぞ、オモチ。ちょっとこれを――」
魔方陣の上に移動しながら受け答えする二人は縦横無尽に襲い掛かるオモチの力を掻い潜り向かって来る複数の追っ手を見据え、真琴はハンカチを広げて無表情で「発動」と唱える。
魔法を繰り出そうとした追っ手に向かってハンカチに描かれた魔方陣は薄ピンク色に発光し、光を直接見たであろう目を押さえる追っ手を囲うようにパッと複数の魔方陣が出現し、再びまばゆい光が彼らを包む。
光が消えた頃には彼らの姿は何処にもなく、オモチは呆然と怪しく笑う真琴を見つめる。
「――あいつらに使うだけだって、ね。魔界にランダムだから、もしかしたら魔王城に行ったりして」
そうだと面白いのになー、とつぶやく真琴にオモチはそっと目を逸らした。
『(末恐ろしい嬢ちゃんだな……まだ初等部に通う歳だろうに)』
身長と女性の象徴のなさ、そして雰囲気で初等部に通う歳だと勘違いしているオモチにとって、今の黒い真琴にかける言葉が見当たらず、真琴は真琴で黒い雰囲気をふっと消してハンカチをポケットに仕舞い、遠い目をするオモチに疑問を抱きながらも魔方陣を発動させるように急かす。
ハッと我に返ったオモチは、達した答え“そういえば、嬢ちゃんのこと知らない”で湧き出た疑問を事もなげに問いかけた。
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