序章:それは平和な日常。

5/6
392人が本棚に入れています
本棚に追加
/346ページ
もそもそとこんがりと焼き上がった食パンをかじりながら咀嚼していると、お味噌汁をすする悠太が不意に口を開く。 「そういえば、真琴はさっき将来とか考えたくないしって言ってたね」 「んう? うん、言った。将来なりたいものとかないのに、冬休み明けたら面接練習あるから欝になっててね」 そこまで言って、真琴は肘を立て食パンをくわえる。 表情は心底うんざりしていて、それに悠太は苦笑をもらす。 「そういう悠ちゃんはなりたいものとかないのー?」 「行儀が悪いから、食べながら喋らないの」 「むぅー」 頬を少し膨らませながらも口をつぐんだ素直な真琴に頬を弛ませながら、悠太は質問に答える。 「公務員、になりたいかな。警察とか……収入安定してるし」 「税金泥棒って世間で批判されてる警察官に?」 「その警察官に真琴の父さんは就いてるでしょ」 「そうでした」 あははと笑い誤魔化そうとする真琴に悠太は苦笑をもらしながらも味噌汁をすする。 真琴もはくはくと残りわずかとなった食パンを食べ、コップに注がれた牛乳を飲む。 「……そうだ、いざとなったら悠ちゃんに嫁ぐことにしよう」 さも名案だと言うように牛乳を飲み干した真琴の言葉に味噌汁の具を思わず詰まらせてしまった悠太は涙目で口を開く。 「な、なんでそうなるの!?」 「いや、将来なりたいものとかないし、いざとなったら悠ちゃんに嫁げばよくねって思っちゃって」 「真琴、ズレてるから!! まず諦めるの早いから!!」
/346ページ

最初のコメントを投稿しよう!