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「ゴールデンウイーク、良かったら泊まりにこない?」  幼なじみでクラスメイトでもある佐山清人(さやまきよと)からそんな誘いがあったのは、昼休みの時だ。  食堂のテーブルで向かい合わせに座り、今日のメニューの中では一番安い月見うどんをすすっていた岡本雅紀(おかもとまさき)は、驚いて顔をあげた。 「え、どうしたんだよ急に」  清人も同じく、月見うどんの汁を一口すすって答えた。 「いや、俺の家族、三泊四日で北海道旅行に行くんだよ。俺はほら、受験生だからお留守番。一人で家にいても暇だしどうせなら雅紀も呼んで、一緒に勉強会しようかなって」  清人は柔和な笑みを浮かべ、そう提案した。ややたれ目気味の細くて黒い瞳がさらに細められて、雅紀を見つめていた。  すっと通った鼻筋や薄い唇、がっしりした男らしい体躯に似合わない優男風の印象を、その穏やかな瞳は与えている。  一方で、雅紀の容姿は清人とは正反対だった。
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