~序章~命を賭して

2/21
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
瓦礫と黒煙の立ち込める都市の中を“それ”は走り抜けていた。 身の丈がビル程もあろうかというその物体は脚となっている車両部分で廃墟となった街道を駆け巡っていた。 侵略者を食い止める為に。 侵略者を打ち倒す為に。 そして、仲間の為の時間を少しでも稼ぐ為に…。 街道を走るその物体の名は非想天則。 そして、ハイパワーによる格闘戦を主体とした非想天則モード3と呼ばれる形態であった。 非想天則の操縦席でひとりの女性が歯噛みしていた。 ウェーブがかかり、すこし膨らんだ感じの青紫の髪をした彼女の名前は八坂神奈子といった。 お世辞にも柔らかいとはいえないシートに身を預けた彼女はその部屋の半分程はあろうかというモニターに厳しい目を走らせている。 何しろ、周りは敵だらけなのだ。 少しでも気を抜こうものならば集中砲火の的になってしまう。 片時も気を抜くことなどできはしない。 こうして今は廃墟と化したこの街で戦闘が開始されてから既に五時間以上が経過していた。 彼女の疲労も相当なものになっていたし、何より、非想天則の損傷も消して少なくはなかった。 非想天則の動力源は常温の核融合炉である。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!