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飼い主であろうその子供は、まさにポカーンという文字が浮かびそうなくらいぼけっと突っ立っている。
ひとしきり笑わせてもらい、立ち上がって犬をわしわしと撫でてやると、引きちぎれんばかりに尻尾をブンブンと振った。
「こいつ、モト?」
「えっ!?は、はいっ」
びくぅっと体を強張らせながら答える。
「俺も。」
「…?」
「俺もモト。元晴。」
いつもは怖いと言われる少しつり上がった目を細め、目尻にしわを寄せて笑うと、その子供もぱあっと明るく笑った。
「お前はこの犬にそっくりだな!」
遊んで遊んでとアピールするようにこちらを爛々とした目で見つめるモトと交互に見比べて、そのまま口に出した。
えへへ、と嬉しそうに照れ笑いを浮かべた子供をさっきモトにそうしたように頭をわしわしと撫でる。
「じゃあな」
「はいっ、あ、あの!ありがとうございます!」
「おー、気を付けてな。」
「はいっ!さようなら!」
軽く手をひらひらさせて歩き出す。
近所の子供かな、小学生くらいかな、でっかい犬だったなとか色々考えながら。
1年後の4月、まさか後輩になるなんて夢にも思わず。
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