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 暗くならないうちに帰ろうと、旭は窓際にある自分の席へ、足早に荷物を取りに戻った。  その際、夕暮れに追い立てられて気持ちが急いてしまったからか、すり抜けていく机の内の一つが腰骨に当たり、ガタッと大きな音を立てた。 「っ、たぁ…」  当たり所が悪かった。  痛みに小さく声を上げて、顔をしかめつつ元凶を睨む。  八つ当たりを多分に含んだ視線の先には、田沼の机があった。 「……」  旭は動きを止め、その机に目を留める。  斜めになった机と出しっぱなしの椅子は、現在の主の性格を実に良く表していた。
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